人間関係が苦しい理由 ~役割の間違いとは~

今日のコラムでは、一緒にいると苦しくなる人間関係に起きていることについてお話します。

この記事ではなぜか一緒にいるとしんどくなる、あるいは苦しくなる人間関係について、どういう関係にその問題が起きやすいのか、その原因と解決方法までをお話していきます。

一緒にいると苦しくなる人間関係とは

例えばあなたにはこんな経験はないでしょうか。

母親から何らかの相談を受けて、自分なりの意見や考えを伝えたら
『それはそうなんだけど』
『あなたはそんな風に言うけど無理なのよ』
『〇〇だから難しいのよ』
などと、出来ない理由だけが返ってきたり、あなたの意見や考えにたいしてあからさまに『そんな意見は聞きたくない(ただ黙って聞いてくれてたら良いのよ!)』と言う態度が返ってきた・・・とか

悩んでいる友人に対して、あなたとしては良かれと思ってアドバイスをしたら
『アドバイスはいらない』
『意見を言われたらしんどくなってしまった』
と言われた・・・など

あなたが良かれと思ってした行動や言動が、相手に喜ばれなかった、受け入れてもらえなかったということは、人間関係の中ではよく起きることかと思います。

そういう問題への対処方法というか、向き合い方については、相手への過剰なお世話はやめましょうとか、相手の問題には境界線を引いて立ち入らないようにしましょうということが言われたりすることが多いかなと思います。

もちろん、それはアドラー心理学で言われる課題の分離と言う考え方にもあるように、人にはそれぞれの課題がある、その課題にはむやみに立ち入ってはいけない、人の問題を勝手に取ってしまってはいけないという考え方で、それは大事な考え方です。

ですがもう一つ。この問題をもっとわかりやすく理解する方法として、役割の相違と言うのがあるのです。

役割の相違とは

人は人間関係の中で常に何らかの役割を持っています。

親子関係であれば、親と子の役割がありますし、会社であれば上司と部下と言う役割がありますし、恋愛関係であればパートナー同士と言う役割が存在します。人は人と繋がる時には、その場に応じた、あるいはその関係性に応じた必要な役割の中で繋がりを作るものです。

そして、この役割がきちんとあるべき形になっている時、その人間関係はある一定のルールが守られるので安定するのです。

つまり、親が親の役割をきちんと果たし、子供が子供の役割をきちんと果たす。双方にその役割が守られていれば、会話も苦しくなりませんし、関係性も(好き嫌いや良し悪しとは別に)安定するものです。

ところが。この役割が相違する、自分の役割を勝手に自分の都合でコロコロ変えるとか、双方の間で予想している役割の認識が違っている時・・・関係性は不安定なものになるのです。

例えば、上司と部下のケースですと、部下から見ればどれだけ親しくなろうとも上司は永遠に上司と言う存在です。人間として親しみを感じて、好意を持って近付いていたとしても、心の中の役割は相手は上司であり、自分は部下であるという役割は一定です。

ですが、例えばこの上司が自分の上司としての役割をコロコロ変えるような人だった場合、時には友人のように振舞い、友人のように横並びの関係を望んでいたかと思えば、気分によって急に上司としての立場を使って支配的な威圧的な態度をとったり暴言を吐いたりもする・・・

そういう対応をされると、部下は上司の態度に応じて自分の役割をコロコロ変える必要が生じて、心にストレスが生じたり、関係性の中で混乱したりすることもあるかもしれません。

親子関係でもそうですね。母親が娘に父親のぐちを聞かせる。よくある話ですが、愚痴を聞かせるというのは、あるいみ娘に対して『相談役』や『何でも話を聞いてくれる親しい友人のような役』を望んでいる状態です。

娘は母親から『相談役』と言う役割を期待されていると認識し、その役割を果たそうと話を聞くわけですが、話を聞いて欲しいだけの母親は、突然娘に与えた役割を変更させて『あなたは子供なんだから余計なことは言わないで』などと言ったりする・・・。

これも、母親が勝手に相手に対する役割をコロコロ変えることで起きている問題と同じです。

役割を間違えないこととは

人は人としては常に対等ですし、人としては平等です。

ですが、人間社会は安定した形を保つためには、それぞれの集団の中で決まった役割をそれぞれが間違えずに担っていることが大事だなと私は思っています。

親は親としての役割をする
子供は子供としての役割をする
友人は友人としての役割をする
上司は上司としての役割をする
部下は部下としての役割をする

これらの役割をひとりの人にいくつも持たせてしまう・・・そうした時に人間関係に問題が生じやすくなると私は考えています。

わかりやすい例で言えば、子供に子供としての役割と、友人(相談者)としての役割を同時に担わせてはいけないというのは良い例かなと思います。これが親子逆転になるケースの原因です。

複数の人間関係が必要な理由

よく心理学の世界では依存先を複数持ちましょう、と言うような言葉で言われますが、これの本当の意味は
それぞれの役割に応じた(適した)人間関係を複数持つようにしましょうという意味です。

夫への相談を誰かにしたいという場合であれば、子供の役割をしなければならない娘に相談者の役割を持たせるのではなく、友人やサークルなどの相談者の役割を担う事が自然な相手を作ることが大事なのです。

上司が仕事の事で疲れてストレスが溜まっている、誰かに相談したい、甘えたい・・・そうした場合であれば、部下としての役割を担わなければならない部下に相談者の役割を負わせるのではなく、きちんと相談者の役割を担うことが適切な役割である純粋な友人に相談をする、甘えるなどの対応が適切です。

つまり。ひとりの人間に複数の役割を負わせてしまう・・・複数の役割を期待してしまう、それが人間関係を苦しくさせたり、人間関係を壊してしまう原因になっていることは非常に多いのです。

だから、複数の依存先(繋がり)を作ることが大事ですよ、と心理学では言われるのです。

解決していく為に

今回の記事を書くにあたっての役割についての考え方は、心理学者の水島弘子先生が対人関係療法の著書の中で書かれている言葉を使わせて頂きましたが、この役割と言う考え方を使うと、人間関係の悩みの解決方法が見えやすくなり、自分の中で理解しやすくするためにとても役に立ちます。

人は悩んでいたり、困っている時、人に相談したいとか話を聞いて欲しいと思うものです。そうした時には、あなたがちゃんと悩みを安心して相談できる役割を持っている人に相談するという風にしてみましょう。

もちろん、それが友人にも重い内容である場合などは、きちんと話を聞く専門の人にその役割を持っている人を相談する相手に選ぶということも選択の一つとして大切なことです。重すぎる話は聞く側にとっても時にとてもしんどくなる場合もあります。相手を大事に思うからこそ相手に期待する役割を間違えないようにする、この考え方が悩んでいる方のご参考になれば幸いです。

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