【心理】対人恐怖と愛着障害

セラピーに来られる方の悩みで特に多いのは、自己否定の問題、そして対人関係での悩みについてのご相談がやはりダントツで多いです。

会社にしてもパートナーシップにしても、子供の友達関係、ママ友等々、人間関係はあらゆる場面で付いて回るものですから、一番生活に影響を及ぼしますし、日常生活を苦しくさせるものです。

今回のコラムではそんな人間関係にまつわる悩み、特に対人恐怖について、対人恐怖と愛着障害、自己否定の問題についてお話していきます。

人が怖い:対人恐怖の悩み

さて、先日。対人恐怖で悩んでいるA子さんが、こんな悩みでご相談に来られました。

  • 人目がいつも気になってしまう
  • 人からどう見られているかいつも怖い
  • 親戚の集まりなどで、どうふるまって良いか分からず不安で緊張する
  • 近所の人と会うと何を話したら良いか分からなくなり緊張する

こういった感覚がある為に、だんだんと人を避けるようになり、外出する事も億劫になり、人の目を避けて生活するようになったと言われました。

でも、このA子さんはこんなに人目を気にして、ずっと緊張し続けていたのですが、自分が人が怖いのだという自覚はありませんでした。

人が怖いから避けているという自覚がないので、人とうまく関われないのは自分の性格のせいだと感じて、周りの他の人と同じように人間関係が作れない自分を責めていました。

このA子さんの例ははあくまでも一例ですが、対人恐怖で悩んで来られる方にとても多いパターンの一つです。A子さんのように、自分が他の人と同じようにふつうに人間関係が作れないことを自分の性格のせいだと責めてきたという方は非常に多いのです。

実は、この悩みを感じる方に多いのは、この自分の対人恐怖を隠して生きているという点。これもわりと多い共通点です。

本当は怖いのに平気なフリをしていたり、本当は大丈夫じゃないのに大丈夫なフリをしていたり。自分が感じている恐怖や不安を人に見せないことが多い特徴があります。

だから、人と会った後にはどーーっと疲れて寝込んでしまったり、疲れのせいで家族や周りの人に八つ当たりしてしまったり。そういう自分をまた、自己否定をすると言う悪循環を繰り返している人も少なくありません。

ご相談に来られたA子さんは、まさにこの典型的な方でした。

人目が怖い=親の目が怖い

対人恐怖の問題を解決していくうえで、自分は人が怖いと自覚している人はまだマシですが、上記のA子さんのように、自分が人が怖いということを自覚していない人に必要な事は、まずその恐怖があると自分で認識することです。

私は人が怖いんだと感じていることを受け入れる事、それがまず最初に必要です。しかし、恐怖を認識するにはまずはその正体を知る必要があります。

  • 私はひとの何が怖いのか
  • 何が起こることを避けているのか
  • 何を感じたくないのか
  • 人を避けることで得られている事は何か

などなどです。

カウンセリングではここを丁寧にお聞きしていくのですが、この原因のほとんどは必ず親子関係に起因しています。

母親が怖かった
父親が怖かった
家の中に安心がなかった
家の中で自分らしくいる事が出来なかった

などなどです。

対人関係の悩みは、この幼少期の家庭の中での緊張感や不安、両親への恐怖などを抑圧してきた感覚が、今の目の前の人間関係で投影され、親の前でしてきたことと同じことを今もしているというケースがほとんどです。

つまり。人目が怖いという人達は、ずっと親の目が怖かった人たちだという事なんです。

人との関わり方がわからない:愛着障害

では、親の目が怖い、親の目が怖かったという人達はどんな背景が多いのでしょうか。

セラピーで扱ってきたクライアントさんのケースで多かったのは、ずっと親のジャッジの目にさらされてきた、つねに親にOKをもらえる自分じゃないとだめだったという人が多いです。

  • 礼儀正しくちゃんとした子でいないといけない
  • 親に迷惑をかけるような恥ずかしい真似をしてはいけない
  • 人から批判されるような振る舞いをしてはいけない
  • 誰から見ても良い子で、ちゃんとしていないといけない

この感覚は、例えて言うと、身体の全方向に鏡を置きながら、その全方向から見てちゃんとしている自分で居ようとするような感覚です。

どこから見てもちゃんとした自分でいないといけない、そうしていないと怒られる、罵声が飛んでくる、見捨てられる、冷たい視線を向けられる、そんな恐怖の感覚です。

だから、どこにいてもリラックス出来ないし、自然な行動も振る舞いも取れず、ずっと人目が怖い感覚にしばられているのです。

これが行き過ぎると、常に人からどう見られているかを気にしすぎるあまりに強迫神経症的な状態になる人や、妄想性の症状を現わす人もいます。それは、ずっと親の怖い目を感じ続けてきた恐怖が体に染みついているからです。

逆に言うと、それは、親からありのままの自分を受け入れてもらえた事がないという事でもあります。

どんなあなたでも愛しているよ
どんなあなたでも受け入れてるよ
どんなあなたでも大事な存在だよ

と言う感覚を、親から一度ももらった事がないということです。

これが愛着障害です。

愛着障害とはつまるところ、人と安心感や信頼感で繋がる事が出来ないという病の事を言うのです。

ありのままの自分の否定=自己否定

親の目から見てOKな自分でいなければいけない、という感覚は強い自己否定につながります。自分の素直な感情表現や、素直な意思表示は全て止めなければいけません。

親にとっての良い子
親の期待通りの子供

それを演じ続けていなければ居場所がなくなり、親から見捨てられてしまうので、ずっと人目を気にし続けながら、人に受け入れてもらえる自分で居続けるために偽りの自分を演じ続ける人生になります。

そうするとどうなるか・・・というと、どんどん自分がわからなくなっていくのです。

私は何が好きなのか
私は何がしたいのか
私は何がしたくないのか
本当はどうしたいのか

どんどんわからなくなっていくのです。

自分がわからない原因は、幼少期から自分自身の意思や感情で決めることをせず、周りの人や周囲の声を正解として、自分以外の外側にあわせて生きてきたことが原因です。

だから自己信頼が育っていないのです。それが自己否定につながっていくわけです。

対人恐怖の問題を解決する為に

この対人恐怖の問題を解決する為には、まずは幼少期の親子関係の中で何が起きていたのか?

どんな事が怖くて
怖いから何をしてきたのか

その幼少期の親との間のトラウマをきちんと解決する事が必要です。

言いたい事を言うと殴られた
逆らうと無視されたり、仲間外れにされた
親がコロコロと態度を変えるので信用出来なかった

など、人が怖いと感じるようになった原因とその恐怖をちゃんと見つけて、そしてその過去の恐怖を終わらせてあげることが必要です。過去と今をちゃんと切り離してあげると、トラウマはちゃんと過去のものとして終わらせてあげることが出来るようになります。

わたしも偉そうに書いていますが、ものすごく対人恐怖が強い人でした。でも、今は人への恐怖はほとんどありません。もちろん、怖いなと思う人はいますが、周りの人すべてが怖く感じるような、人の視線の怖さは今は全くなくなりました。

だから、この対人恐怖は必ず解決していけると自分自身の体感の変化からも断言できます。

人間関係の問題を解決すると、本当に人生のQOLが大きく変わります。日々を楽しく生きられるようになりますし、人とも楽しく自然な自分で付き合えるようになっていきます。

だからもし、あなたが対人恐怖で悩んでいるなら、性格の問題だと諦めずにセラピーやカウンセリングで幼少期のトラウマをきちんと扱って解決されることをお勧めします。

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