人付き合いが怖いのは「面前DV」のせい?脳に刻まれたトラウマを癒やす方法

「職場の人と話すとき、いつも相手の顔色を伺って、嫌われないように必死になってしまう」
「誰かが不機嫌そうにしていると、自分が何か悪いことをしたんじゃないかと心臓がバクバクする」
「仲良くなりたいのに、一定の距離以上近づかれると急に怖くなって逃げ出したくなる」

対人恐怖や、人付き合いのしんどさを抱えて私のカウンセリングに来られる方は、このようなお悩みを感じていることが多いものです。

そうした方のお話をじっくり伺っていくと、多くの方に共通するある背景が見えてくるのです。

それが「子供の頃、両親の仲が悪かった」という経験です。

両親が不仲だったからと言っても、自分が直接危害を加えられた経験はない方などは、「でも、私は親から直接暴力を振るわれたわけではないんです・・・。ただ、いつも家の中がピリピリしていて」と、申し訳なさそうに話し始める場合もあります。

ですが、激しい怒鳴り合い、物が壊れる音、あるいは冷徹な無視が続く家庭で育つことは、実は幼い子供にとって「日常が戦場である」ことと同じなのです。

今日はそんな両親の不仲の中で育ってきたかた、面前DVを見てきた方たちがどうして人間関係に辛さを感じやすくなるのか、その理由と解決方法についてお話していきたいと思います。

最後までお読みいただければ、理由がわからない生きづらさの解決方法のヒントがわかるかもしれません。

面前DVの影響は「喧嘩を見ていただけ」ではすまないもの

さて。改めて。あなたは面前DVという言葉を聞いたことはあるでしょうか?

面前DVとは、子供がいる目の前で、配偶者や家族に対して暴力を振るうことを指します。 ここで言う「暴力」には、直接的な身体への暴力(殴る・蹴る)だけでなく、以下のような行為もすべて含まれます。

激しい怒鳴り合いや罵倒
物を投げたり、壁を叩いたりして壊す威嚇
「お前のせいでこうなった」といった精神的な追い詰め
家庭内の空気を凍らせるような冷徹な無視(心理的虐待)

近年の脳科学の研究では、こうした「面前DV」を日常的に目撃することが、子供の脳に深刻な物理的ダメージを与えることが明らかになっています。

  • 視覚野の萎縮: 恐ろしい光景を「見たくない」という本能的な拒絶反応から、後頭部にある視覚野の一部が萎縮してしまうことがあります。
  • 扁桃体(へんとうたい)の暴走: 不安や恐怖を司る扁桃体が過敏になり、大人になっても常に「警戒モード」が解除されなくなります。例えば、些細な物音や人の表情の変化に過剰に反応してしまうなどの症状が現れるのは、性格のせいではなく、脳が生き延びるために作り上げた「防衛システム」が働いているためと考えられます。
  • 前頭前野の機能低下: 恐怖に支配されることで、感情をコントロールする前頭前野の働きが抑えられ、感情の起伏が激しくなったり、逆に何も感じないように「麻痺」させてしまったりします。よく問題視されている切れやすい子供は、この前頭前野の働きが抑えられていることが原因である場合があることも知られています。

面前DVや両親の激しい喧嘩を見て育った子供たちは、直接殴られていなくても、脳は戦場を生き抜いたサバイバーと同じように、深い傷を負っていきます。

目には見えない傷のため、「この程度のことで・・・」と言ってしまうかもしれませんが、あなたの心や脳に与えられた影響は、決して軽いものではありません。まずはそのことを知ってほしいと思います。

よくある「生きづらさ」のチェックリスト

面前DVや両親の喧嘩を見て育った方は、その繰り返される日常のために、複雑性PTSDと言われる症状を持つことがあると言われています。

以下がその複雑性PTSDの症状の一部です。

  • 音や気配に過敏: 職場で誰かがドアを強く閉めたり、ため息をついたりするだけで、「自分が何か怒らせた?」と心臓がバクバクする。
  • 「凪」の状態が不安: 平和で穏やかな時間ほど、「いつか悪いことが起きる」と落ち着かなくなり、自らトラブルを起こしたり、わざと忙しくしてしまったりする。
  • 感情の麻痺: 自分が何をしたいのか、何が好きなのかがわからない。悲しいはずなのに涙が出ない、あるいは突然の怒りが抑えられない。
  • 対人関係の極端さ: 相手に100%合わせるか、さもなければ完全に心を閉ざして逃げ出すかのどちらかになってしまう。
面前DV 脳への影響

どうでしょうか、「私もそうだ」と感じるサインはなかったでしょうか。

もし、いくつか心当たりがあるとしたら、あなたは知らない間に脳に傷を負ってしまっている、複雑性トラウマがも影響しているのかもしれません。

トラウマとはなにか?

では、そもそも、トラウマとはなんでしょうか。

「トラウマ」という言葉を聞くと、大きな事故や事件など、特別な出来事を想像するかもしれません。しかし、心理学的な視点で見れば、トラウマとは出来事そのものの大きさだけを指すのではありません。

トラウマとは、「その時の自分には抱えきれないほどの圧倒的な衝撃によって、心と体の処理能力を超えてしまった状態」のことを言います。

通常、嫌な出来事があっても、時間はかかりますが脳で「過去のこと」として処理され、記憶の整理棚に収納されます。しかし、トラウマとなった記憶は、脳の整理棚に収まることができません。

「今」起きていることとして保存される 記憶が未処理のまま、生々しい感情や身体感覚(動悸や震え、息苦しさ)と一緒に、脳の「今」を感じる場所に留まり続けます。

スイッチが入ると再現される(フラッシュバック) 大人になってから、誰かの不機嫌な態度や大きな音といった「かつての戦場を連想させる刺激」に触れると、脳が瞬時に「今、命が危ない!」と誤作動を起こし、当時の恐怖をリアルに再現してしまいます。

トラウマは、あなたの根性や性格の問題ではありません。 圧倒的な恐怖(面前DVなど)にさらされた際、私たちの体が生き延びるために、自律神経を「戦うか、逃げるか、あるいは固まるか」という緊急モードに切り替えることで起きる防衛反応です。

つまり、あなたに起きているトラウマ反応は決して悪者ではなく、あなたを守るために起きている反応だったのだ、ということはまず知っていてほしいと思います。

複雑性トラウマを抱えている”良い子”というサバイバー

ここで、あるクライエントさん(仮名A子さん)の事例をお話したいと思います。

A子さんは、「人からの頼みごとを断れないこと」と「誰といてもなぜか底知れない孤独感を感じること」に悩んで、カウンセリングに来られました。

お話をお聞きしている中でわかってきたのは、A子さんのご両親はとても不仲で、食事中は会話もなく、母親はいつも父親の顔色を見ながらビクビクと過ごし、毎日夜中になると大きな声で父親が母親を怒鳴る声を、布団の中で耳をふさぎながら聞いていた、というエピソードでした。

A子さんはそんな両親の様子を見ながら、時には母親の慰め役をし、時には父親の機嫌を取りながら、ふたりの間でいつもビクビクしながら両親の顔色を見ていた・・・と、時に涙しながら話してくださいました。

A子さんは自分は直接暴力を受けたわけではないし、怖い思いをした記憶もなかったので、自分がこんなに人の顔色を見てしまう、人の頼みごとを断れない、なぜか誰といても心の中に穴が空いたように寂しくてたまらないのか、
その理由が親との関係にあるとは思っていなかったのですが

数回のカウンセリングを受けて頂く中で、ご自身の中で少しずつ過去の思い出がよみがえり、幼いころの自分が本当はずっと怖かったことや、だれにも守られず不安でたまらなかった気持ちに気づいていきました。

その結果、彼女にとって「人の役に立つこと」は、家庭という戦場で生き残るための唯一の武器だったこと、しかし、それは同時に「役に立たない自分には価値がない」という呪いとなり、彼女を疲弊させていたことに気づいていきました。

そして、カウンセリングの中で彼女が気づいたのは、「あんなに頑張って家族を守っていたのに、誰にも私を守ってくれる人はいなかった」という絶望的なまでの寂しさでした。

複雑性トラウマ カウンセリング

余談ながら、子供にとってこの寂しさに気づくことは、とても勇気がいることです。でも、その痛みに気づいてあげることが、自分自身を救い出し、本当の意味で『自分の人生』を歩き始めるためのスタートラインになります。

その過程こそが、次にお話するトラウマを解決するための方法につながっていく、ということは覚えていてほしいと思います。

トラウマを一人で解決するのが難しい理由

何度も繰り返しお伝えしたいことですが、複雑性トラウマは、決してあなたの「性格」や「考え方のクセ」の問題ではありません。

複雑性トラウマを抱えている人たちは、長年の恐怖にさらされ続けた結果、脳の神経系が生き延びるための「サバイバルモード(戦闘態勢)」で固定されてしまっています。

だからこそ、本を読んで知識を得たり、無理に前向きに考えようとしたりするだけでは、体の奥底に深く刻まれた「恐怖のスイッチ」をオフにすることは、とても難しいことなのです。

また、思い出すことさえ苦しい記憶には、なかなか一人では向き合えないものです。 「思い出さないこと」で、これ以上自分が壊れないように必死に心を守る……。 それは、あなたが今日まで生き抜くために必要だった、防衛本能でもあります。特にトラウマの記憶は、そうした「心のシャッター」が強く働いてしまうことが多いのです。

神経系に刻まれた反応は、頭(思考)だけで変えようとするのではなく、安心・安全なプロとの対話を通じて、この世界への安心感を取り戻しながら、少しずつ、少しずつ解きほぐしていく必要があります。

これが、トラウマを解決することがひとりではなかなか難しいと言われる理由のひとつです。

解決していくために

ここまで読んでいただくと、面前DVがどんな影響を脳に与えるか、その代表として複雑性トラウマがどんな生きづらさを生み出すか、がわかって頂けたかと思います。

Natureにカウンセリングに来られる方たちは、この複雑性トラウマを抱えた方が非常に多く、今まで沢山のクライアントさんの生きづらさを軽くするお手伝いをしてきました。

そのうえであなたにお伝えしたいことは、カウンセリングを恐れないで欲しいということ。

カウンセリングもセラピーもただ過去の辛い記憶を掘り起こす場所ではありません。 それは、誰かの顔色を伺い、誰かの人生を肩代わりしてきたあなたが、「自分の人生の主役」を取り戻すために必要なプロセスだ、と知ってほしいのです。

長年サバイバルモードで戦ってきたあなたの神経系は、今きっと、「もう休んでいいよ」という合図を待っているはずです。

トラウマの鎖を解き、凍りついた感情を溶かしていくのは、時間がかかるかもしれません。 でも、一歩ずつ進んでいけば、必ず景色は変わります。 誰かのために生きる自分ではなく、自分のために安心して息ができる自分で生きられるように、ぜひお手伝いさせてください。

もしこの記事を読んで、胸がざわついたり、涙がこぼれそうになったりしたのなら、それはあなたの心が「助けて」とサインを出しているのかもしれません。

その小さな声に、耳を傾けてあげてくださいね。あなたの大切な人生のために。心の重荷を降ろし、新しい一歩を一緒に踏み出していきましょう。

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