今日のコラムでは、なかなか治りにくい病気(例えばアトピーや喘息)の心理的背景について、お話したいと思います。
最初にお断りしておきますが、わたしはお医者さまではありませんので、上記の病気に限らずあらゆる病気に関しては、心理的な問題と向き合うだけで治る等ということは一切思っていません。
病気に関しては、きちんと医療機関で治療を受けることが最優先です。そのうえで、心理的背景も一緒に向き合っていけたら、より治療の効果があがるのではないか?というスタンスで書いている事を、ご理解のうえお読みいただければと思います。
アトピー性皮膚炎がなかなか治らないA子さん
ではまずは、実際に繰り返す病気に悩んでカウンセリングに来てくださったA子さんのお話をさせて頂きます。
(注:A子さんからは予めHPでのご紹介について了解いただいております。ありがとうございます!)
A子さんは喜多村のカウンセリングを2年弱(あいだは空いています)、受けて頂いているクライアントさまです。
セミナーにも来て下さり、心の勉強もご自身のためにされています。
そんなA子さんが久しぶりに、心が辛くなったので整理したいんです、とカウンセリングに来て下さいました。
A子さんの悩みは

最近気づいたのですが。定期的にアトピーが悪化することを繰り返しているんです。

というものでした。ほかにも主訴(悩み)はありましたが、それは別記事にさせて頂く予定ですので、今回の記事では繰り返すアトピーの悩みについてのみ取り扱わせていただきます。
アトピーはご存じの方も多いとは思いますが、皮膚が乾燥し痒くてたまらず、掻いてしまう事で悪化し、ひどい症状になってしまうと浸出液まで出てとても辛い症状を起こす皮膚疾患です。
喘息などと同じく、アレルギー反応で起きる病気とされています。
私の娘たちもアトピー持ちで(ハウスダストと猫っ毛)、幼い頃から皮膚科にはずっとお世話になっています。
そんな娘のアトピーも私はずっと見ていますので、アトピーの反応が強く出る時の傾向は何となく気付いています。それはアレルギー反応のせいだけではなく、心理的なストレスがかかった時(嫌なことがあった、プレッシャーのかかることが待っている、忙しくて眠れていない、ストレスで食事が偏っているなど)に強く症状が出ると思っています。
特に多いのは、嫌な出来事があった時に多いと感じています。
そこで、私はA子さんにこうお聞きしてみました。

なにか、最近嫌な出来事や、ストレスがかかるような出来事はありましたか?

いえ。。。とくに何もないんです・・・
A子さんは明確に、原因となるような嫌な出来事や、ストレスのかかる出来事があったというお話はされませんでした。だから

・・・・あやしい。におう!(心の声)
と私は思いました。
アトピーを患っている人に多い傾向=我慢強さ
それは、アトピーを持っている人に多いもう一つの傾向が、我慢強いという事だからです。

我慢強い人は、その我慢強さゆえに自分の不快に気付きにくい傾向があります。
単純に言えば、嫌を感じにくいのです。(※「あの人嫌い―!」みたいなのが無いという人もいます)
嫌を感じにくい人は、人と接するときに良い人をしやすくなります。
それは、嫌な気持ちになっていることを相手には見せずに、にこやかで平気な顔を見せる傾向があるからです。
A子さんに私はお聞きしました

嫌な人や、嫌なことに「イヤ!」って思えますか?
そうすると、A子さんはこう言われました。

実は、いつも人を良いように見てしまう癖があって。その事にも気付いていました。
あの人は良い人だな、あの人のこういうところは良いところだな、と
人の良い面を見ては自分はダメだな・・・と比較してしまうんです
と言われたのです。
これは本当にわかりやすいお話で。A子さんのように、自分の不快な感情(怒りや不満など)を感じないようにしている人は、自分が不快な感情にならないために、相手をよく見ようとする傾向があるのです。
相手を美化しようとするのです。
目の前の人が良い人だと思えていれば、自分の感じたくない感情から逃げることが出来るからですね。
心が傷つかないための防衛反応なのです。
感情を避けるようになった原因は親子関係にあった
そこから、A子さんの幼少期のお話を聞かせていただきました。

母はよくヒステリーを起こしていました。怒ると暴力的になることもあり、食事の時に姉妹がものさしで叩かれていることもありました。
母は自分の手が痛いからという理由で、ものさしで叩いていました。
このお話をお聞きして、A子さんがなぜ自分の感情を抑圧するようになったのか、私は非常に理解できました。
幼い子供は親がいなければ生きていけません。食事も生活も学校も、すべてが親に依存しながら生きています。だから、子供は親には逆らえないという感覚になりやすいのです。
その逆らえない親が怖い人だった場合、子供はどうすることを選ぶでしょうか。
そうです。「怖いと思う感情を消そう」と決めるのです。
どうやって・・・か?
「叩かれているのは姉が母のいうことを聞かないからだ」
「母が怒るのは私が(怒らせるような)悪いことをしたからだ」
という風に、この出来事は自分が悪かったから起きたのだという風にすり替えることで、親に対する様々な感情を抑圧するのです。
思ったとおり、A子さんはお母さんからこう言われていたそうです。
「A子はしっかりものだから大丈夫」
「A子は我慢強いから大丈夫」
「A子はわがまま言わず頑張ってる良い子」
これらのメッセージによってA子さんはこう思うようになっていきました。
私は甘えてはいけない
私は我慢しなければいけない
私はわがまま言わずに頑張って良い子でいなければいけない
これがA子さんの慢性化したアトピーの原因のひとつでした。
ストレスは意識しないと気付けないもの
そして、A子さんのお母さんは普段は子供には一切関心を持たない方だったそうですが、唯一、優しく接してくれた時があったそうで
それが子供が病気になった時、だったのだそうです。
普段は無関心なお母さんが、自分が熱を出したり、風邪をひいた時だけは優しくしてくれる・・・。
こんな経験をして育つと、子供は病気になれば(お母さんに)優しくしてもらえる、構ってもらえると学ぶようになります。
これは禁止令決断の健康であるなという禁止令にあたるのですが、この禁止令を持っている人は自分の健康を損なうことで相手の関心を得ようとしたり、自分の健康を損なった時だけ弱音を吐けたり、人を頼れたりするのです。
A子さんの場合もまさにそうでした。
子供の頃から強くなければ、弱音を吐かないように、我慢強くいなければ、と抑圧しているA子さんにとって、自分が弱音を吐ける場面は、病気になる事や、アトピーが悪化する事になっていたのです。
A子さんにとってのアトピーは、自分の辛さを表現する為の大切な手段だったのです。
解決していくために
A子さんはカウンセリングの中で、自分のアトピーがどんな役割を果たしてくれていたのかを理解していきました。悪者だと思っていたアトピーの症状は、本当は悪者ではなく、自分の心の中からのサインだったのです。
カウンセリングが終わるころにA子さんはこう話してくれました。

そういえば、最近やっと自分のアトピーとちゃんと向き合おうと思って、治療を始めたんです。
長年、くりかえしながら放置していたんですけど。
実はこれはとても素晴らしい変化なんです。
それはこの行動に変化は、自分を大事にしようと思えるようになった証だからです。そして同時に、自分の辛さを表現する手段に病気(アトピー)を使う必要はないということを理解した証でもあるからです。
辛い時には言葉を使ってつらいと言っていい
我慢せずに自分の気持ちを言葉で伝えていい
そう思えるようになれば、自分の思いの表現方法としてアトピーを使う必要はなくなっていきます。
A子さんはカウンセリングも受けて下さっていますが、セミナーでも心理学を学んでくださっています。心理学を学んだことで、カウンセリングでの気付きにより深い理解が出来るようになって、こうした変化が起きたのだなあと私は思っています。
そんなA子さんの変化がとても嬉しくて、今回の記事に掲載させていただきました。
アトピーに限らず、喘息などは特に心理的原因も多いと言われています。根本的な治療は医療機関になりますが、その治療をより効果をあげていくためにも、心理的なアプローチでご自身の人生や幼少期からの問題と向き合うこともとてもお勧めです。
長い人生を心も体もいっしょに健康に幸せに生きられるように、ぜひ協力させて下さいね。
